瀬戸内レモンの特徴と産地

瀬戸内レモンは、明治31年に和歌山県から広島県の豊田郡大長村（現呉市豊町大長）に、ネーブルの苗木とともに混入していたレモンの苗木を植えたことがきっかけで広がりました。広島では約100年以上の歴史を持つ農産物です。

レモンには品種がいくつかありますが、瀬戸内レモンは主に「ビアフランカ」のレモンが当てはまります。ビアフランカはシチリア原産の品種で、枝の「とげ」が少ないので「とげ無しレモン」とも呼ばれています。爽やかな香りと強い酸味が特徴で、果汁も多いため料理やお菓子、デザートなどに多く活用されます。

海外から輸入するレモンのほとんどは、原産国から日本までの長い船旅でレモンが傷まないように防腐剤や防カビ剤が使用されています。さらに、レモンにツヤを出すため、ワックスがかけられているのです。これらの薬剤は発がん性や精子量の低下などの様々な問題が指摘されています。

特に防カビ剤は皮に染み込んでいるため、普通に水洗いする程度では除去できず、除去するには皮の部分をすべて取り除かなければなりません。一方、国産の瀬戸内レモンは長期間の輸送の必要がありませんので、防腐剤や防カビ剤を使用する必要がなく、皮ごとすべて調理できます。

さらに、収穫直前まで樹上で育てていますので、果肉と果汁の旨味と糖度が高いのが特徴です。また、比較的皮が薄い品種のため、調理しやすいと人気があります。

国産レモンの有名産地

国内で流通しているレモンのほとんどが外国産で、約60％がアメリカ、約30％がチリからの輸入です。国産レモンのシェアは10％未満であり、そのうちの約42％は広島県で生産されています。

広島県では、生口島と高根島という2つの島から成る尾道市瀬戸田町での生産が盛んです。街路樹にはレモンの木が植えてあるなど、町ぐるみで瀬戸内レモンのブランド化に取り組んでいます。また、大崎上島や呉市なども、広島県内で有名なレモンの産地です。

広島県以外でのレモンの産地を見ると、2位の愛媛県が約31％、3位の和歌山県が約9％です。これらの地域は、ミカンなど柑橘系の名産地でもあります。

瀬戸内海でレモンが育つ理由

瀬戸内海は1年の平均気温が15℃と温暖で、降水量が少ない傾向にあります。この気候はレモン栽培に適しており、世界的なレモンの産地であるカリフォルニアや地中海にも近い環境です。さらに、北に中国山脈が、南には四国山脈がありますので、湿気を含んだ風が山に当たることで水分を失い、乾燥した風へと変化します。そのため、湿気の影響を受けにくいのが特徴です。

レモンは雨や湿気に弱く、黒点病などの病気にかかりやすいため、瀬戸内海の環境は高品質のレモンの栽培には最適な気候です。