ベテラン農家から学ぶ。
日本の米産業の行く末
尾賀さん
広島県・大竹市松ヶ原町で、米の栽培を行う尾賀さん。取材した時期はまさに田植え直前。尾賀さんの半生と、日本の米産業が直面している壁についてお話を伺えました。
愛用してきた打ち鍬とともに
「田んぼの中でも端は石になってて機械で草を刈れないんですね」そう話す尾賀さんが使っていたのは打ち鍬(うちぐわ)。木の柄の部分からも長年愛用してきたのだろうなと感じます。「もう農業を始めて何十年かな、ずっと米でして。いわゆるベテランですね笑」そう言って照れながら草を刈る尾賀さんは何とも愛らしいです。
日本の田んぼが直面する壁
周りも田んぼが多い大竹市。米を育てることの実情を聞きました。「わしは定年退職してるけど、米農家はほとんど兼業でしょう。そうすると土日とか作業が被りますよね」田植え機やコンバインなど高額な農機もシェリングが進まないのが分かります。「土地が荒れて草が伸び放題にならないように水稲をやる。でも作るのも大変でお金にならない。つまり逃げ場がないんですよ」田んぼのあり方を考えさせられるお話だと感じます。
日本の文化に馴染む「しきみ」とは?
そんな尾賀さんも米以外に栽培している作物があるのだとか。「しきみっていうお墓などに束にして飾る葉ですね。昔は山口県で花屋をしてまして、榊なども扱っていました」
最近はお墓に持ち寄る人も減ってきて扱う量は減ったのだそう。細く長くでも、花や草木を飾る日本のお墓参り文化が続いていけば思います。
何十年と米を作ってきて引退前に直面する米産業の現状。尾賀さんのような日本の食文化を守ってきた方々に、何か希望を持ってもらえるような産業にしていきたいと感じた取材でした。