収穫直後に産地より直送!こだわりの樹上完熟シャインマスカット!

山昭農園 名執 昭仁 Akihito Natori

生産品目

  • シャインマスカット

実は日本生まれの人気品種「シャインマスカット」。2006年に品種登録と聞くとつい最近のことのように感じます。

糖度は20度前後と高いうえに、皮は薄く渋みがないので皮ごと食べることができ、果肉はサクッと歯切れのいい食感が人気を博し、2022年には巨峰やデラウェアを抜き栽培面積ではトップに踊り出ました。

高級なイメージのあるシャインマスカットですが、スーパーで見かけることも多くなり身近なフルーツとして根付きつつあります。

海外産(中国や韓国)も多く出回り、当たりはずれがある印象がある人も多いのではないでしょうか。

そこで、品種の持つ本来のおいしさを引き出すためにこだわりを持ってシャインマスカットを生産している名執さんに話を伺いました。

 

最高に美味しい状態で食べてもらうためにも一工夫

収穫しているシャインマスカットを拝見すると、軸の部分が長くとってあるように思うのですが、これは房を傷つけずに持ち運びやすくするためなのでしょうか?

「いえ。実は、収穫した後もブドウ自体には力が残っていて、軸に残っている水分や養分を吸わせてあげているんです。なるべく収穫してからすぐに出荷することで少しでも早く食べる人にも届けたいと思っているのですが、運んでいる最中にも栄養を少しでも与えてあげて、元気なままお客さんに届けたいんです。スーパーではこのような状態では見かけないですよね」

 

まるで愛しい我が子にお弁当を持たせてあげているイメージですね。

「ははは!そうですね(笑)。あとはシャインマスカットは収穫してすぐというよりも、収穫してから1日程度経った方が甘味や酸味が落ち着いてなじむことで美味しく感じるんです」

 

手に届いて口に入るまで美味しい状態で届けたいという名執さんの思いが詰まった工夫だったのですね。

 

 

温暖化が及ぼす影響と順応していく大切さ

「私の感覚では昔のシャインマスカットの方が皮が薄くて口に残りづらく美味しかったと思うんですよね」

 

今の方が、皮が厚いのですか?十分薄くてパリッとした食感のように思えますが…

「近年は非常に気温が高くなっているじゃないですか。ブドウも人間と一緒でこれだけ暑い日が続くと自身を守るためにも皮を厚くしていくんでしょうね。外で働いている人と事務仕事をしている人の肌質が違うのと同じなんです」

 

なるほど。それでは名執さんのおっしゃる昔のような皮が薄く美味しいシャインマスカットは作ることが難しくなってきているのですか?

「ブドウの房を日焼けや雨から守るためにかける紙の素材を変えて対応しています。茶色や青色、緑色のものを使う人も多いのですが、私は家の内装にも使う『タイレック』という素材を使うことで、光のみならず熱も反射させてブドウを守ってあげています。この資材が非常に高いんですけど、美味しいものにするためにはやるべきだと思うんです」

 

環境の変化にも順応することで品質の向上を追い求めているのですね。

「やっぱりお客さんが美味しいと言ってくれることがうれしいんです。そのために妥協することはしたくないし、もっと美味しくなるためには何をすればいいのか日々考えながら行動にうつしています」

 

手塩にかけた名執さんのシャインマスカットを食べるお客さんには知ってもらいたいこだわりですね!

 

  

持続可能な農業を目指して

 温暖化の問題もありましたが環境が変化してくことで生産が難しくなってくると大変ですよね。

「そうですね。自分にもできることはないかと思い、4パーミルイニシアティブの認定を取得して、農業分野からも脱炭素目指していきたいと思って活動しています」

 

4パーミルイニシアティブとは:土壌の健康を維持しながら、温室効果ガスの排出量を削減し、農業分野から脱炭素社会の実現を目指す取り組み。2015年のCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)においてフランス政府が主導で提唱し、山梨県は20204月に、国内の地方自治体として初めて参加。

 

そのような取り組みがあることは知りませんでした。海外ではメジャーなのでしょうか。

「はい。実は山梨県が国内で先駆けて参加している取り組みなんです。これからを背負っていく若者のためにもやるべきだと思っています。来年(2024年)で還暦を迎えますし今のうちに未来の農家に投資しておかないと。そのうちにアルバイトで雇ってもらわないといけないですからね(笑)」

 

あらゆる分野でSDGsの必要性が叫ばれている中、名執さんのようなお考えを持っている方が一人でも多くなることで環境もより良い方向に向かっていきますね。

 

余計なことはしない、ありのままでいい

普段はどんな栽培をされているのですか?

「うちは草生栽培と言ってあえて雑草を除草せず活用していく栽培方法にしています。普通は草が嫌だったり、堆肥を混ぜ込むためにトラクターで耕耘したくなるんですよね」

 

そこをあえてしないのは何か理由があるのでしょうか?

「せっかく土壌たちが頑張って整えたバランスを崩したくないんですよね。山を見てみてください。余計なことをしなくても毎年青々しい木々が成っているではないですか。自然の力は素晴らしいですよ、我々はコントロールするというより、成長しやすいように少しだけお手伝いしてあげればいいんです。トラクターを使うにも燃料を使うし排ガスも出ますしね」

 

まさに「“草”と共に“生”きる」ですね!勉強になります。

 

※草生栽培とは:果樹園の木陰に生える草、林の中に生える雑草を除草せず、それらの根を利用して農地の土壌を管理する方法で土壌浸食防止、有機物補給効果等様々な利点を持ち、環境にやさしく持続的な農業に役立つ技術と考えられています。

 

収穫の時期を終えて、束の間の休息も楽しむ

 これだけ手間をかけていて、しっかり休むことはできているんですか?

「うちは、シャインマスカットのほかにも「スカーレット」や「クイーンニーナ」のようなブドウや、さくらんぼ、桃、柿をつくっています。ブドウの出荷が終わる9月末から柿の出荷が始まるまでの期間は時間が取れるので趣味を楽しむことができるんです」

 

貴重な余暇で、何をすることが多いんですか?

「実はアメリカで農業研修をしていたこともあり、ロカビリーやあっちの方の文化が好きなんです。妻や気の合う友人たちとツーリングに行ったり、旅行に行ったりしています」

 

確かに倉庫のいたるところに「ROUTE66」のマークやアメリカを彷彿させる装飾が目に付くと思いました。 

「そうなんです。バイクも車もナンバーは「66」に統一しているんですよ(笑)」

 

こんなところにも名執さんの細かい部分へのこだわりが出ているんですね!

 

最後に、山昭農園さんのシャインマスカットを食べる方々へメッセージをお願いします。

 

「農業を30年やっていても30回しか出荷が経験できないんです。だからこそ勉強して周りの農家と情報を交換しながらやれることはすべてやり切って、毎年進化させています。自信をもって作ったシャインマスカットを大切な人と楽しんでもらいたいです」

 

 

―インタビュアーからひと言―

 

美味しくなると思うから、手に取った人が喜んでくれると思うから、やった方がいいことは全部やる。

時には効率よりも自分が良いと思うものに手間暇をかけ、やり抜く名執さん。

「大変だけど、(妻や農業研修生と)馬鹿なことを言い合いながらやるのも楽しい」 

笑いながらそう語る姿はまさにプロフェッショナル。

『品質が良いものを作るのは当たり前』

この突き抜けたやり抜く精神を知った今、名執さんのシャインマスカットの一粒の重みを感じることができ、

いっそう美味しくいただけるのではないでしょうか。